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こんにちは。令和3年の2月にはいりました。
1月には11都府県に緊急事態宣言が発令されるなどコロナ禍は続いていますが、少しでも早く、安心して生活できる世の中が戻るように祈っております。 さて、今回で21回目となる建築家コラムのゲストは「 渡辺 隆 (わたなべたかし)」さんです。 渡辺さんは、浜松市の竹下一級建築士事務所で11年間勤務した後、2008年より渡辺隆建築設計事務所を設立し、出身地の磐田市でご活躍されています。 今回、渡辺さんからどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは渡辺さんのコラムをお楽しみください。 ![]() 1973年 静岡県磐田市生まれ 1996年 金沢工業大学工学部建築学科卒業 1996〜2007年 竹下一級建築士事務所 2008年 渡辺隆建築設計事務所 設立 2018年〜 静岡理工科大学 工学部 建築学科 非常勤講師 受賞 2005年「イワタノイエ」にて第26回INAXデザインコンテスト 部門賞 2005年「イワタノイエ」にて第37回中部建築賞 入選 2011年「ナオ・ハウス」にて第43回中部建築賞 入選 2013年「ナオ・ハウス」にて第01回JA東海住宅建築賞 奨励賞 2016年「豊岡中央交流センター」にて第9回静岡県景観賞 最優秀賞(県知事賞) 2018年「磐田卓球場ラリーナ」にて令和元年度 日事連建築賞 優秀賞 など 撮影 Haruka Aoki 床を施工するということ
渡辺隆建築設計事務所は、キャンプ用品を転用して設えたおおらかなオフィス空間「イワタノイエ」で日々設計をしている。そのキャンプ用のイスやテーブルを本来の場所と用途で使用するために、社員旅行がキャンプになり、忘年会が裏庭と裏山を使った野外フェス(ワタフェス)なったという、ちょっとヘンな設計事務所だ。 キャンプ用品を転用した「イワタノイエ」の事務所空間
渡辺事務所の忘年会的野外フェス(ワタフェス)
社員旅行のキャンプ地は毎年、新潟県三条市のSnowPeak本社キャンプ場「SnowPeak Headquarters」(昨年はコロナウイルスの影響を受け事務所の裏庭となったが一昨年前まで6回、新潟で実施している)。オフィス内で使用しているSnowPeak製のイスやテーブルを折りたたんで車に積み、気になる建築を見学しながら新潟へ向かい、毎年同じ丘の上にテントとタープを張り寝食を共にする(二泊三日)。
渡辺事務所の社員旅行キャンプ
社員旅行キャンプの様子 みんなで調理し食べる
社員旅行キャンプの様子 キャンプは毎年4月上旬に行っているが雪が降る日もある
自然の中では、テーブルは地面の凸凹に影響を受けて傾き箸が転がるし、テントで寝転がればごつごつとした石ころや木の根が気になったり地面からの冷気で体が冷やされたりでなかなか寝付けない。また予期せぬ雨が降った時などは撤収作業も含め悲惨だ。五感で自然を感じ、不便さを工夫しながら過ごすのがキャンプの醍醐味であるのだが、同時に普段過ごしている水平な床の有難さを感じずにはいられない。
建築の床の、強度や精度・断熱や防湿は、工事の工程や品質を管理する現場監督さんや専門業種の職人さんの手によって実現されている。 例えば、地面に接する1階コンクリートスラブの施工だけをとっても、精度の基準となる仮設工事(ベンチマークを設定・縄張り・遣方)から始まり、掘削などの土工事、基礎の下の杭・砕石や捨てコンクリート・防湿シートや断熱材を施す地業工事、基礎やスラブの鉄筋工事、基礎やスラブを形作る型枠工事、生コンクリートを流し込むコンクリート工事、仕上げの左官工事と、細やかで複雑な工程がある。※1 一度施工されてしまえば当たり前の存在に思える地面の上に置かれた水平なコンクリート床の背景には、たくさんの工種と工種ごとの精度と品質の積み重ねが詰まっているのだ。 施工現場 鉄筋工事(スラブ・基礎配筋) 磐田卓球場ラリーナ
磐田卓球場ラリーナ 撮影 Kenta Hasegawa
過酷な現場で(現在はコロナ対策にも注意を払わなければならない)安定して精度をクリアする現場監督さんや職人さんの努力と技術は本当に素晴らしい。そんなみなさんが働く施工現場に思いを巡らせ、設計では床の水平ライン一本から思慮深く大切に描き、監理では感謝を忘れず現場に入ることを常に心がけていたい。
※1 それぞれの工程には品質や精度についての基準が細かく設けられている。私たち設計者が公共建築を設計・監理する際に基準としている「公共建築工事標準仕様書」や「建築工事監理指針」に定められている各工種の精度や品質の基準には、杭(既製コンクリート杭の場合)の打ち込み精度は水平方向:杭の径の1/4かつ100mm・鉛直精度1/100、鉄筋のかぶり厚さ(鉄筋と型枠の隙間 )は土に接する基礎では60mm・スラブでは40mm、鉄筋同士のあき(間隔)は、@コンクリートの粗骨材の最大寸法の1.25倍・A25mm・B隣り合う鉄筋径の平均径の1.5倍うち最大のもの以上、生コンクリートではスランプ(硬さ)はスランプ8〜18では±2.5cm・空気量の誤差は±1.5%・練り混ぜから打ち込みまでの時間は外気温25℃の場合120分、コンクリートの金ゴテ仕上げの平たんさの目安は3mにつき7mm以内などがある。 渡辺さん、ありがとうございました。
キャンプやイワフェスで仲間との交流を楽しんでいる時の自然の土の床と、施工に関わる多くの皆さんの手によって作られた、精度の高い建築の床はどちらも欠かせない床ですね。 今年はコロナ禍が治まって例年通りのキャンプができるといいですね。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。 どうもありがとうございました。 |
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