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こんにちは。
令和2年も10月となり、秋らしさが感じられるようになってきました。 Go To Travelキャンペーンも始まり人の移動が活発になりつつありますが、コロナウイルスの感染者数は増加しないことを願っている今日この頃です。 さて、今回で19回目となる建築家コラムのゲストは「 工藤浩平 (くどうこうへい)」さんです。 工藤さんは、妹島和世さんと西沢立衛さん率いるSANAAに6年間の勤務を経て2017年の10月に独立された、注目の若手建築家です。 今回、工藤さんからはどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは工藤さんのコラムをお楽しみください。 ![]() 建築家/工藤浩平建築設計事務所 代表 1984年 秋田県生まれ。 2011年 東京藝術大学大学院 美術研究科 修了。 2012年 S A N A A(妹島和世+西沢立衛)勤務。 (2017年まで) 2017年 工藤浩平建築設計事務所 設立 2018年〜 国立秋田高専 非常勤講師 2019年〜 東京デザイナー学院 非常勤講師 2020年〜 東京電機大学 非常勤講師 2019年 日本空間デザイン大賞 2019 住空間部門 銅賞 2020年 LIXILフロントコンテスト2019 小規模施設部門 金賞 2020年 グッドデザイン賞 受賞 床と高さとランドスケープ。
ゆるやかな傾斜地に住宅をつくることになり、視線やランドスケープといったことが気になった。僕らがいつも見ている目の高さからの風景や犬の目線、子供の頃、全てのスケールを大きく感じていた風景、踏み台に上がったときのちょっと高い位置からみえる部屋の光景。こういった自分の立っている高さとその目線からひろがる空間が、建築にどんな影響を与えるのか、そしてランドスケープはどのように変化するのかということを今、考えている。 建築の床の高さを決める時、何を基準とするのか、どういった風景が広がるのかに興味を持ち、文献を調べていると、桂離宮に出会った。桂離宮の敷地は大きくみるとフラットで、そこに意図的に高低差を発生させていて豊かなランドスケープが建築と一緒に展開している。古書院は地面から1500mmの高さをベースにして、一の間の南縁では800mm、月見台は2000mm、水面からは1000mm下がって3000mmの高低差が存在している。庭の中には緩やかな傾斜の上に卍字亭があり、床面は地面にビタッとついているが、周りとの差は2000mm程度ある。松琴亭は床から500mm、水面から2000mmある。このように微妙な高低差を内外で展開し、桂離宮全体が構成されているのがわかる。ランドスケープと付かず離れずの距離を保ちながら色々な目線と風景を体感できる場所になれば良いと思った。
今回計画している住宅は、豊かな自然と住宅街の間の傾斜地にたっている。地形と一緒に展開することを当初は考えていたが、地形に寄り添って生活すると目線の高さに変化がないことに気づき、床を上げることを考えた。
離れの茶室は、床から800mm。頂上のバスルーム付近では床から600mm、中間地点にあるギャラリーやルームは1000~1500mm、ダイニングは1500mm、リビングは2000mmから2700mmくらいまで。住宅地からは4000mm程度のある位置に床の高さを計画した。
外部からの目線や、内部からの目線が場所によって違ったり、移動しながらあたりを見回すとランドスケープが 近づいたり離れたりしながら展開していくような住宅を考えた。敷地は寒冷地で積雪もあるので、外観こそ現代的であるが、地面と床の関係や距離のとり方は、古来から日本にある高床式住居のようにも見える。
床の高さが与える影響というのを肌で感じて、この住宅ができたあと、11年ぶりにまた桂離宮にいってみたい。
工藤さん、ありがとうございました。
桂離宮とランドスケープの関係性について非常に興味深いお話しでした。 月見台で月を眺めながら、水面に映る月も同時に鑑賞している光景が目に浮かびます。 まさに床の高さによって自然や景観の見え方、見方が変わる事例だと思います。 現在建築中の住宅は壁一面の大きなガラスで、外部の自然がダイレクトに感じられそうですね。 この「現代的高床式住居」が完成してからの床の体験レポートがどこかで拝見できることを楽しみにしております。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。 どうもありがとうございました。 |
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