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建築家コラム 第15回ゲスト 「武田 清明」 2020年02月3日 一覧へ戻る
こんにちは。
令和2年も一昨日から2月となり春の到来が待ち遠しく感じる今日この頃ですが、
皆さまは寒さ厳しい中でもお元気にご活躍のこととお慶び申し上げます。

さて、今回で15回目となる建築家コラムのゲストは「武田清明(たけだきよあき)」さんです。

武田さんは約10年間、隈研吾さんの事務所に在籍されていましたが、
今回、武田さんからはどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。

それでは武田さんのコラムをお楽しみください。




 ■建築家コラム 第15回ゲスト 「武田 清明」 拡大写真 

武田 清明
建築家。武田清明建築設計事務所代表。

1982年神奈川県生まれ。2007年イーストロンドン大学大学院修了。2008〜18年隈研吾建築都市設計事務所勤務、同事務所設計室長歴任。2018年武田清明建築設計事務所設立。

2019年「6つの小さな離れの家」でSDレビュー2018鹿島賞を受賞。2019年〜千葉工業大学非常勤講師







建築における床の意味や意匠について




地面はいつ、なぜ「床」になったのだろう。
これまで建築の進化は、自然の厳しさとの格闘の中で起こってきたのだと思うんです。想定外の集中豪雨で茅葺屋根が吹き飛ばされれば、それに耐えうる新しい屋根が考えられてきたし、かつてない台風で土壁が崩されれば、より頑丈な新しい外壁が考えられてきました。床だって同じように進化を繰り返してきたはずです。日本では竪穴式住居のように「地面」に暮らす時代がながく続いてきましたが、水没や水害が繰り返し起これば、あてになる頼れる地面=「床」が考えられたことは容易に想像できます。自然の脅威は、いつだって人間を不安にさせてきました。その不安が起こるたび、建築の各エレメントはより逞しく安心なものに更新されてきたのかもしれません。自然に負けないこと、自然から独立すること、それがこれまでの建築の大きな目標だったのです。
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近代で、建築は自然環境と一線をおくことをより明確にしました。コルビジェのサヴォア邸がわかりやすい例で、ピロティで建築と大地を切り離し、地面の形や状況に左右されない自由な平面を獲得しました。自然はコントロールできない得体のしれないものだから、外部では縁を切り、内部からも締め出す。現在に至っては、一滴の雨漏りも結露もほんの少しの隙間風すらも許されない人間の感覚、社会の風潮が生まれています。建築がこれまで進化してきたことは間違いない。だが、この流れにの行き着く先に、僕は大きな疑問があります。一切の自然を排除しきったその果てに、空間に中に「豊かさ」「美しさ」は残るのだろうか。近代建築は自然と決別し、建築そのものに美しさや豊かさを求めた。だが、僕の今の持論は、建築はただ自然の受容器としてのみ機能し、豊かさ、美しさを発しているのは、植物、光、風、熱、水などの自然の側にのみ存在するのではないかという考えだ。建築は器に過ぎない。でも、その自然を受け入れる今までにない器の形はまだまだあるはずだ。今一度、自然を受け入れるおおらかな建築・空間・エレメントが必要だと僕は感じています。
 ■建築家コラム 第15回ゲスト 「武田 清明」 拡大写真 

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自然を受け入れる床ってないのだろうか。

進行中の「鶴岡邸」のプロジェクトでは、大地の熱環境を取り込む床を考えています。通常、基礎スラブの下に断熱材を入れ、大地と室内で熱環境を断絶させます。ここでは、あえて断熱材は設けずに、夏はひんやりした土の冷気取り込み、冬は基礎スラブと地面の間に床暖房を設置することで土を蓄熱体として活用し空間をじんわり暖めます。建築と自然を区別せず、大地も床の層構成に一つとして考える。床でもあり、大地でもあるような、新しい建築のエレメントを試みています。
自然は、人間に不安を与えると同時に豊かさも与えるという折り合いの難しい存在だ。だからと言って、建築がそれを受け入れるのをあきらめ安心だけを満たす方向に未来と希望はないということはもうわかった。僕はそれらを受け入れるベクトルで建築にエネルギーを注いでいきたい。そして人間の空間と生活に「豊かさ」を取り戻したい。

 ■建築家コラム 第15回ゲスト 「武田 清明」 拡大写真 

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武田さん、ありがとうございました。
これまでになかった気候変動により「想定外」の天変地異が世界的な規模で発生しています。
被害も人間の想像を軽く超える事態が今後も続くのでしょうか?
自然と人間との間で繰り返されてきた攻防の先にあるのはどんな未来であり建築なのでしょう?

多くの事を考えさせてくれる武田さんのコラムでした。

今後ますますのご活躍をお祈りしながら素敵な未来を想像しようと思います。
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