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こんにちは。
令和2年も8月となりました。 7月の長雨と豪雨で水害にあわれた地域の方々には心よりお見舞い申し上げます。 また新型コロナウイルスの感染者も急増し、第二派の到来かと言われていますが、この危機をなんとか乗り越えていけることを祈っております。 さて、今回で18回目となる建築家コラムのゲストは「藤田 雄介 (ふじたゆうすけ)」さんです。 藤田さんは、東京都市大学大学院工学研究科を修了された後、手塚建築研究所に1年間勤務され、その後ご自身の設計事務所 Camp Design inc. を設立されました。 建築設計やリノベーションで注目され、建具専門のネットストアを運営されるなど、幅広くご活躍されている若手建築家です。 今回、藤田さんからはどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは藤田さんのコラムをお楽しみください。 ![]() 床と艶のはなし 我々の事務所では、住宅設計が仕事の大半を占める。住宅の床の仕上げとなると、無垢材を用いたフローリングにすることが多い。その場合、色味や木目による風合いにより、材種を決める場合ことが大勢だが、塗装などによる仕上げも関係してくる。主には、艶の有る無しについてである。以前は、床に艶がなくマットな質感を求めていたが、艶があることで魅力的な床をつくれることを気づかせてくれた、2つの建築について書いていきたい。 1つは阪急電車の梅田駅ホームである。ここは、9号線(番線ではなく、こう呼ぶらしい)までが並列にあるホームで、私鉄の中では最大級のターミナルでもあるという。そのため、複数の電車が乗り入れ人々が交錯するホームは、普段使いしていない外モノの自分には特に高揚感を感じる駅だ。その空間の質を支えているものが、ホームに敷き詰められている床である。艶があり黒く凸凹した床は、天井のシーリングライトの光を反射して、ホームに並ぶ電車(この阪急の車体のマルーン色も美しい)や行き交う人々の姿を浮き立たせている。この床はアスファルトタイルというらしいが、アスベストを含有していたこともあり、現在では製造中止となっている。そのため、この床は出来るだけ長い間残されることを願う。 もう一つは、旧閑谷学校講堂である。国宝にもなっている言わずと知れた名建築なので、ここでは詳しい説明は割愛しておく。この内部において、際立った存在感をもっているのが床である。拭き漆によって滑らかに仕上げられた光沢感のある床は、四方ぐるりと柱間に穿たれた花頭窓越しに見える木々の緑や、秋には赤く燃える紅葉の色を映し出し、薄暗い内部を彩っている。この建築自体が、カメラの構造を体現した装置=カメラ・オブスキュラ(暗い箱)であるということは、西本真一氏のテキスト*により指摘されているが、構造があり開口部があり光を溜める箱として原初的な構成を持つこの構築物を、装置ではなく建築たらしめているのがこの床ではないだろうか。
*「国宝・閑谷学校|Timeless Landscape 1」millegraph, 2017
現代では、光沢感をもった素材は、あまり積極的に選ばれない場合が多いように感じる。特に日本ではその傾向が顕著である。だが、上記の2つの建築において、壁や天井とは異なり床だけが可能にすることがあると感じた。それはある種の現象性であり、床というエレメントと艶の掛け合わせがつくりだす思いもよらない効用なのだと思う。そんな発見から自分も影響を受けて、少しずつ自作で艶のある床を導入している。しかし艶の扱いはまだまだ発展途上である。
藤田さん、床と艶のおはなし、ありがとうございました。 弊社でもフローリングはマットな質感のものをご採用いただくことが圧倒的に多いですが、コラムにあげられた2つの事例では、艶のある床材がその空間を非常に強く印象づけていると感じました。 これからのご活躍も楽しみにしております |
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