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今日から10月。
朝晩は秋の気配を感じる季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 台風の被害にあわれた皆さま、一日でも早い復旧、復興を願っております。 どうかご自愛くださいませ。 さて、第13回目となる建築家コラムですが、今回も前回に続き女性の建築家「高濱史子(たかはまふみこ)」さんです。 高濱さんからどのような床にまつわるお話が聞けるのが楽しみです。 それでは高濱さんのコラムをお楽しみください。 ![]() 1979年 神戸生まれ。 2003年 京都大学建築学科卒業 2004年 クリスチャン・ケレツ事務所インターンシップ 2005年 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ゲストスチューデント) 2006年 HHF Architects インターンシップ 2007年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了 2007-2012年 Herzog & de Meuron勤務 2012年 +ft+/高濱史子建築設計事務所設立 2012-2013年 神戸大学学術推進研究員 2013-2015年 東京大学特任研究員 2017年より工学院大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師。 主な受賞にU-35 Glass Architecture Competition 2015 最優秀賞、 Prix Versailles 2017 (Christian Dada Singapore) 主な作品に「Christian Dada Taipei(2018)」「大磯の大きな住宅(2018)」 「Maebashi Brick Warehouse(2019)」ほか。 著書に『海外で建築を仕事にする』(共著、学術出版社)。 ポートレートphoto: Kenya Chiba 建築における床の意味や意匠について
「床の意味とは?」と自分に問いかけた時、その存在があまりに当たり前で明確な答えが持てず戸惑った。壁が無くても、屋根が無くても自分は存在できるが、床が無いと自分はそこに存在できない。それくらい大事なものであるからこそ、この機会に改めて床に対する私自身の捉え方について、自身のプロジェクトと共に見つめ直してみようと思う。 「Maebashi Shed2」は、群馬県前橋市の郊外に建つ貸店舗である。何でも入る小屋であり、同時に存在自体がこの地域にとってスパイスとなる発信力の高い建築にして欲しい、という要望に対し、光の器をコンセプトに空間全体に溜まった光と共に、中のアクティビティが通りへと漏れだす空間を提案した。 Maebashi Shed2 photo: Takumi Ota
周辺建物に馴染むシンプルな矩形平面を持つ切妻屋根のヴォリュームを基本としながら、通りに対しての正面性、車路幅を確保するため、通りに平行にヴォリュームをカットし、カット面を全面開口部とした。この時、屋根と床部分を意図的に残している。屋根を残すことで庇が生まれ、アプローチやガラスの反射を抑える効果が得られる。そして床を残すことで、内部と外部の境界を越えて原型である矩形の領域がそこに現れる。それは、拡張した内部空間であり、アプローチ空間であり、時に車路空間として意味の重なり合う場として存在する。 Maebashi Shed2 photo: Takumi Ota
「Maebashi Brick Warehouse」は、群馬県前橋市の中央通り商店街再⽣へ向けた[de+sign project]の第三弾として計画した「前橋カツカミ」というとんかつ屋さんである。建築家の中村竜治さん、長坂常さんよって手掛けられた隣二軒と調和を保ちつつ、単体としても個性がある建築であること、そしてデザインコードとして外装と舗装に赤レンガを使用することが求められた。 Maebashi Brick Warehouse photo: Shinya Kigure
3つの建築の調和、関係性を構築する上で最も重要だったのが、隣接している長坂さんの敷地に計画された中庭の存在だった。既に商店街の裏をつないでいくというコンセプトのもと、中庭を中心とした新たな場の使われ方が実現していたが、我々は要件から敷地いっぱいにヴォリュームを建てる必要があったため、ヴォイドを繋ぐことが出来ない。代わりに、大きな家型の開口部と中庭を接続し、中庭を中庭として囲みつつ、光や風や人の流れを少しでも繋ぎたいと考えた。 Maebashi Brick Warehouse photo: Shinya Kigure
その際、着目したのが床の切り替え位置だ。この3つの敷地は、前面道路(アーケード)の勾配なりに、ちょうど階段一段分ずつ段差がつき、下っている。長坂さんは、中村さんの敷地レベルを一部引き込み、舗装パターンも段差部分で切り替えていた。それはまるで自分の敷地の一部を相手に渡しているようだが、結果的にはその中庭にアプローチする人の流れを生み、2つの敷地は、利用者にとっては1つの敷地に2つの建物が建っているように見えていた。我々もそれに習い、中庭のレベルと貼りパターンを大開口まで延長した。そうすることで、少しだけ中庭が広くなり、出入りもしやすくなると共に、敷地境界で段差をつけてしまうと通路として機能しなくなるところを新たな通路として活用できるようにした。敢えて述べなければ気付かないような繊細な床の操作ではあるが、中庭を介した豊かな関係の発展に一役買ってくれることを期待している。 Maebashi Brick Warehouse
こうして床というテーマを切り口に、最近手掛けた2つのプロジェクトを再考した時に共通して見えて来たのは、Maebashi Shed2では、内外の境界と床仕上げの境界をずらすこと、Maebashi Brick Warehouseでは、敷地境界と床の段差・パターン切り替え位置をずらすことで、私は床(領域)が分節される境界を曖昧にするという試みをしているということだった。 床とは領域そのものであり、本来大地からつながる全てひとつながりのものが、実に様々な要件(所有、内外、機能、プライバシー等)に基づいて、様々な方法(壁、レベル差、仕上の切り替え等.)で分節されているに過ぎないのではないだろうか。 これからも、切っても切り離せない床の分節方法とその境界の在り方を探求していきたいと思う。 高濱さん、どうもありがとうございました。 Maebashi Shed2では一つの敷地内の床に境界を作りながら交差する複数の役割を与え、Maebashi Brick Warehouseでは隣接する2つの店舗の敷地を動線まで含め一つの共有地として体感させる、同じ床に対して全く異なる関係性を持たせたのがとても面白いと感じました。 こらからのますますのご活躍を楽しみにしております! |
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