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JIA主催イベント【若手建築家と共に考える万博と「これからの建築」】アーカイブ 2025年08月27日 一覧へ戻る
残暑厳しい中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

先日、2025年8月24日(日)に、大阪 茨木市にある @おにクル で開催された
JIA主催トークイベント【若手建築家と共に考える 万博と「これからの建築」】に参加してまいりました。

とても貴重なお話を伺うことができ、開かれた場でのトークイベントで
一般参加者からの質問にもお答えいただき、共にこれからの建築について考えさせていただきました。

登壇者の建築家の皆様のコンテクストや、計画段階のお話を、
万博の休憩所やトイレの写真と併せてご紹介いたします。

※ご紹介できる内容が、トークイベントでお聞きした内容の抜粋となってしまう点、
 また、聴講者の主観も交えてのご紹介となる点、ご容赦ください。
 ■JIA主催イベント【若手建築家と共に考える万博と「これからの建築」】アーカイブ 拡大写真 

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【登壇者】
■新森雄大さん
 休憩所4設計者|一級建築士事務所Schenk Hattori + Niimori Jamison

■工藤浩平さん
 休憩所2設計者|工藤浩平建築設計事務所

■野中あつみさん・三谷裕樹さん
 サテライトスタジオ東設計者|ナノメートルアーキテクチャー一級建築士事務所

■米澤隆さん
 トイレ5設計者|米澤隆建築設計事務所

■小林広美さん・大野宏さん・竹村優里佳さん
 トイレ2設計者|studio m!kke 一級建築士事務所 + Studio on_site + Yurica Design and Architecture
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新森雄大さん
 休憩所4設計者|一級建築士事務所Schenk Hattori + Niimori Jamison


6万人テクノポート計画・北京の頃のオリンピック誘致にも失敗した場所、
コンテナ埠頭のような場所だった夢洲は、
軟弱地盤のゴミの埋立地=浮見島=人工島のため、
重いものを載せられないことから、削ったものを盛るという発想で始まったそうです。

敷地全体を山と谷が交互に現れるように交点を作り、
地形と同形状の鉄筋メッシュを90度回転させることで
地形と鉄筋の間に空間が生まれるという作り方。

また、会期終了後は、「転用」ではなく、この場所を「残したい」という想いもあり、
藤の木を這わせたとのこと。

元々は鉄筋ではなく、紙を使用したかったそうですが、どうしても素材として難しく
鉄筋を使用されたそうです。鉄筋のあまり素材をピクトサインに再利用されていますので、
ぜひこれから行かれる方は注目してみてください。

また、鉄筋をコーティングしたFRP素材で、30個の椅子を製作されたそうで、
中之島美術館で販売中だそうです。


#「けんちく」を「つくる」 - 行為と意味の広がり
#環境とこう法の関係
(こう法は構法と工法の両方の意味を指しているので、ひらがなのキーワードにされたそうです)
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工藤浩平さん
 休憩所2設計者|工藤浩平建築設計事務所


日頃から、作って終わりではなく、生み出して、動かす(運用する)
モノとコトを大切にした活動をされている工藤さんは、
万博でも、技術と環境の関わりを考えられたそうです。

建築を地球の循環に位置づけ、
1000年前は・・1000年後はどうなっていくのかに思考を巡らせ
大阪城を建造した3、400年前に使われた瀬戸内の石が、
今は大阪湾に埋もれ、魚の棲家になっていることを知ったそうです。

また、現在大阪湾の窪地にたまる淀みを改善するため、窪地を埋める活動もなされていることを知り、
山から削った石を、半年間だけ万博に使用し、その後海に戻すことで、
環境改善の一助となると考え、今回の石を使うことを決められたそうです。

石を吊るという点においては、多くの方が様々な視点で意見が交わされたと思いますが、
改めて、情報との向き合い方や、他者の受け入れ方・受け止め方についても
感がさせられたと工藤さんはおっしゃっていました。

#情報との向き合い方
#人間であること
#みんなの居場所の作り方、作られ方
#他社の受け入れ方、受け止め方
 ■JIA主催イベント【若手建築家と共に考える万博と「これからの建築」】アーカイブ 拡大写真 

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野中あつみさん・三谷裕樹さん
 サテライトスタジオ東設計者|ナノメートルアーキテクチャー一級建築士事務所


全国から人間の都合で不要になってしまった「困った木」を集めて作る
サテライトスタジオを作る計画を立てられ、
ありとあらゆる可能性にコンタクトを取られたそうですが、
なかなか困った木を集めるのに苦労されたそうです。

木の収集をきっかけに、その裏側にある社会問題や環境問題、産業問題に
色々な気づきがあったとお話しされていました。

また、万博のマニフェストに、廃棄までを考えないといけなく、
この木がどこから来て、どこへ行くのかを考える必要があったそう。

通常耐久性が求められる外壁も、茅葺だと葦が簡単には手に入らないが、
万博=半年間という短い会期ということもあり、容易に手に入る「稲藁の苫編み」を
採用されたそうです。素材の寿命やサイクル、入手経路についても考えさせられた
とのことでした。

#トレーサビリティ(素材の履歴、痕跡、形式をなぞる)
#ホール(無目的と多目的、未目的、らしくなさ)
 ■JIA主催イベント【若手建築家と共に考える万博と「これからの建築」】アーカイブ 拡大写真 

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米澤隆さん
 トイレ5設計者|米澤隆建築設計事務所


55年前1970年の大阪万博の時代は、スクラップ&ビルドの時代。
現在は、新陳代謝を考えて、生きながらえさせることを考えないといけない時代。

前回の大阪万博の時代に提唱された「メタボリズム建築」を
多様で複雑、変化も速い現代、55年の時を経てアップデートかつ
リバイバルさせた発想が、積み木のようなトイレだそうです。

ユニット化されていることで、積み木のようにばらけさせることができ、
会期後は、個別に転用することができる。

他の方も実施されていますが、「ジェンダーへの挑戦」という意味で、
間にオールジェンダートイレを設置し、性別の区分けを緩やかにされた。
性別のカラーイメージも取り払うという試みをされているそうです。
これが、わかりづらいという意見もありますが、まさにこれが提唱しているテーマであるそうです。

また、水受けのない蛇口も、夏の暑い時期はタオルを濡らしたり、手や足を洗ったり
来場者が自由活用していただけている。

このトイレに限らず、今回の万博は、自分で使い方や攻略方法を編み出して、
自分の楽しみ方を見出している方が多いところが面白いと
米澤さんは語っていらっしゃいました。

#クロスオーバーアーキテクチャー・関係性のデザイン
#複雑で変化の速い社会への呼応
#「つくる」と「うまれる」の間
#開かれたデザイン
#ナラティブ
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小林広美さん・大野宏さん・竹村優里佳さん
 トイレ2設計者|studio m!kke 一級建築士事務所 + Studio on_site + Yurica Design and Architecture


The Garden of Zannen-ishi Stonesというネーミングのこのトイレは、
400年前、大阪城の石垣建設の際に切り出され、活用されずに残っていた石を
再び万博で使用したプロジェクト。

石というのは、通常切り出されて均一に使われるのが近代だが、
これをありのままで使えないか・・と考えられ、石の表情を見て、
どう使うかを考えられたそう。

石と屋根の接合部は、石の形状をスキャンし、その形状に合わせて
切り出した木材を使用している、デジタルと石工技術の融合だ。

この巨石を運ぶことに、なぜか人は魅了され、多くの方にご協力いただき、
実現できた、この行為は、まさにお祭りのような試みだったとも
話されていらっしゃいました。


#人間の根源 #祭り的行為 #無意味性 #自然と人間 #職人×デジタル #ナラティブへの応答
#建築と考古学 #五感・知覚 #Open Nostalgic #もの派
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登壇者の皆様のプレゼンテーションの後、一般参加者も交えた質問タイムも設けられ、

建築とは何か・・
建築家とはどんなことをしているのか・・・
建築家から、そのプロジェクトに関係するプロフェッショナルに求めるものとは・・?
といった内容の意見交換がなされました。

万博だからこそ、こういった開かれた意見交換ができるところに面白みも感じ、
改めて、建築家がどのようなことをしているのかを伝えていく必要性や、
共に創る者は、共に考えていくことが大事だということ、
建築だけに限らず、相手のことを考えて対話する姿勢であったり、
社会全体も、さまざまなことに寛容であることが大切なのではないかと
考えさせていただく機会になりました。
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「EXPO 2025 大阪・関西万博」の休憩所他設計業務の
公募型プロポーザルにて選ばれた20組の建築家たちによるグループ展が、
10月19日までTOTOギャラリー・間で開催されています。

会場を埋め尽くす模型や資料、映像などは、現地の建築を見たり、お話を聞くのと、
また別の視点で詳しく知ることができ、とても興味深かったです。

展覧会名:新しい建築の当事者たち
会期:2025年7月24日(木)— 10月19日(日)

開館時間:11:00 –18:00
休館日:月曜・祝日
入場料:無料
会場:TOTOギャラリー・間
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