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皆さんこんにちは。
令和7年2月の建築家コラムをお届けします。 寒い日が続き、インフルエンザが流行っていますが、皆さまにおかれましては体調に気を付けてお過ごしください。 さて、45回目のゲストは「子浦 中(しお あたる)」さんです。 子浦さんは東海大学大学院を修了後、都内設計事務所、NAP建築設計事務所を経て2016年にシオ建築設計事務所を設立され、ご活躍中です。 今回、子浦さんからどんな「床」にまつわるお話が聞けるのかとても楽しみです。 それでは子浦さんのコラムをお楽しみください。 シオ建築設計事務所HP https://www.naasa.jp/ ![]() 富山県生まれ 2003年 東海大学工学部建築学科卒業 2005年 東海大学大学院工学研究科建築学専攻修了 2005年-都内設計事務所勤務 2012年-株式会社NAP建築設計事務所 2016年 株式会社シオ建築設計事務所設立 2023年-日本工業大学非常勤講師 ■受賞・入賞 2015年 秋田県藤里町かもや堂 リノベーションコンペ最終選考案 2019年 富山県氷見市海浜植物園リニューアル工事 設計業務委託公募型プロポーザル最終選考案 2021年 いばらきデザインセレクション2021 選定 2022年 いばらきデザインセレクション2022 シリーズ選定 2022年 AICA 施工例コンテスト 2022 特別賞 2024年 日本空間デザイン賞ロングリスト 2024年 木材利用推進コンクール優秀賞(優良施設部門) 2024年 いばらきデザインセレクション2024 シリーズ選定 靴に小石が入っただけで私たちは、違和感を覚える。
それだけ、人間の足は敏感である。 私の実家は、祖父が建てた築60年以上の間口が狭く奥行の長い町屋の様な住宅である。 この住宅は、畳とフローリングが混在している。私は、子供の頃からスリッパを使わなかった。畳ではスリッパを脱いで、フローリングではスリッパを履いてという動作が面倒だったことに加え、子供用のスリッパも用意されてなかった。そのため、私はいつも畳の質感やフローリングのツルツルしたテクスチャ、経年変化で浮造り加工されたようなテクスチャを感じ、冬は氷の上を歩いているかの様な冷気を床から足を通して感じていた。この様な住宅で育った私は季節や床の質感を常に足で感じていた。 それから時間が経ち、私は建築家になった。 私は既製品ではなく、日本の伝統工芸を活かした工芸品の様な素材や一手間かけた素材にこだわり建築を作っている。 handcraft house なぐり仕上げの床とオリジナルの窯変釉を施したタイル 撮影 淺川敏
子供のころ裸足で過ごしていた私は、温かみのあるいつも裸足で歩いて気持ちのいい床を作りたいを思っている。ナグリや表面加工の施されたフローリング、足触りの良いR加工を施した石の上框やジェッドアンドブラスト加工の石、色にこだわったシルクの様な足触りのカーペット、施釉のタイルなど実際に採用した。それらはどれも厚みのある材料を用い、現在主流になっている張り物ではできない加工を施したものである。
handcraft house リビング。なぐり仕上げの床とR加工を施した無垢の枠材の取り合い。 撮影 淺川敏
handcraft house 寝室。色と素材にこだわり足触りのよいカーペットで柔らかく仕上げている。 撮影 淺川敏
床は、人と建築が常に触れている部位である。
レバーハンドルや取手、手摺など人が手に触れる部分や椅子やソファなどの家具は人に優しく気を使い設計するのに対し、薄っぺらい突板を貼っただけのようなフローリングや座ると痛い床、ぶつかると痛い角のある段差などに代表されるように、床は優しく設計されていないように感じる。 arrow chair 矢印のような三角形の四本足とひじ掛けから名付けた。座った時に体に触れる部分は全て丸みを付けることで座り心地を良くした。 撮影 淺川敏
Big Eaves Lounge 木製削出取手。指の形状に合わせて木を削って作った。 撮影 淺川敏
しかし昭和の頃まで日本人は床に座り、床に机を置きご飯を食べ、布団を敷いて床を中心にして生活をしていた。今でも小さな子供は床の上で遊び寝転がり生活し、茶道などの伝統文化では床に座り床に直接茶碗などの茶道具を置き、机のように使って点前や食事を行う。
即今 広間。各テーブルをフラットにして座敷として使う。床前ではお茶のお点前が行われている。 撮影 淺川敏
昭和と生活スタイルは異なってきているが、改めて床を中心に生活していたことを考え直し、今後は温かみのある漆のフローリングや踏み心地のいいカーペットなど人が裸足で過ごしたくなる、床に座って生活したくなるような温かみのあるものを作っていきたい。
子浦さん、ありがとうございました。 私の子供の頃も昭和の時代でしたが、当時は畳の上や布団で生活をしていました。冬は炬燵に入り家族で鍋をつついた楽しい思い出もありますが、そのように考えると、床中心の生活は人との距離感を近づけていたと思います。 私もなぐり加工のフローリングは好きですが、その凹凸を見ると床を裸足で踏む自分をイメージし、床の世界に引き込まれるような気がします。 これからもますますのご活躍をお祈りしております。どうもありがとうございました。 |
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